SaaSの運用

フルスタック SaaS ボイラープレートと Sushi Templates の比較

主要なオープンソース Next.js SaaS スターターを、Sushi Templates と機能・デザイン・オープン性・メンテナンス・レスポンシブ対応・ドキュメントで比較します。

フルスタック SaaS ボイラープレートと Sushi Templates の比較

SaaS をゼロから作るのは時間がかかります。そこでフルスタックの SaaS ボイラープレートが人気です。フロント/バック/DB/認証などの共通機能を揃え、開発の立ち上がりを加速してくれます。本稿では、代表的なオープンソースの Next.js SaaS スターターを Sushi Templates(Sushi の SaaS ボイラープレート)と比較し、Sushi の強みを見ていきます。評価軸は、フルスタックとしての機能充実度、デザイン品質、オープン性、メンテナンスの活発さ、レスポンシブ(モバイル対応)、そしてドキュメントです。

フルスタック SaaS ボイラープレートの状況

Next.js 向けのオープンソース SaaS スターターは近年急増しました。多くは、任意の SaaS に必要な基本機能をモダンなスタックでカバーします。たとえば有名な Next.js SaaS Starter は、Next.js + Postgres、Drizzle ORM、Stripe、Shadcn/UI(Radix UI ベース)の UI コンポーネントを備えています[1][2]。他にも次のようなテンプレートがあります。

  • SaaS Boilerplate(ixartz)— React/Next.js 製のフルスタック。組み込み認証、マルチテナンシー(チーム/組織)、ロール/権限、i18n、LP、テストなどを同梱。認証に Clerk を採用し、ログ/エラーモニタリング等の実用機能も含みます[3][4]
  • Cloudflare SaaS Kit — Cloudflare 向けに最適化。Cloudflare D1(サーバーレス SQLite)と Cloudflare Pages を活用。Next.js + NextAuth、Drizzle、Shadcn UI を組み合わせ、グローバルエッジに展開できます[5]
  • SaasFly — 「エンタープライズ級」の Next.js ボイラープレート。Next.js + Postgres、Prisma ORM、NextAuth(必要に応じ Clerk も)、Stripe、Shadcn UI に加え、モノレポ構成、tRPC や状態管理など拡張用の仕込みもあります[6][7]
  • Next SaaS Stripe Starter — Next.js 14 のスターター。ユーザーロールと管理画面を持ち、Prisma + Neon(ホスト型 Postgres)、Auth.js(NextAuth v5)、Resend/React Email、Stripe サブスク/サーバーレス連携を内蔵します[8][9]

いずれもフロントとバックを同梱するフルスタック型で、サインアップ/支払い/ダッシュボードなどを即座に触れます。Sushi Templates も同カテゴリで、Next.js 15 を採用し「Day1 から本番運用可」を掲げるスターターです[10]。以下、各観点で比較します。

デザインと UI

多くのスターターは Tailwind CSS と Shadcn/UI(Radix UI)で、整った見た目とアクセシブルなコンポーネントを提供します[2]。Sushi Templates も Next.js + Tailwind 構成で[11]、Shadcn/UI を取り入れています。実運用に耐える LP(多言語ヒーロー)やダッシュボードを備え、タイポグラフィ/セクション構成やダークモード対応も良好。Tailwind のユーティリティで完全レスポンシブ(モバイル対応)を実現しています。業界の定番テンプレ同様、Sushi も Lighthouse を意識した軽量構成で、Next.js 15 + RSC による体感速度の高さも魅力です[12]。また、Fumadocs UI による MDX ドキュメントのスタイリングもあり、ドキュメントページまでデザイン品質が行き届いています[13]

オープンソースとコミュニティ

比較対象はいずれも無料のオープンソース(多くは MIT)。Next.js SaaS Starter は GitHub で 14k+ Star を集める巨大コミュニティです[14]。ixartz の SaaS-Boilerplate も MIT(無償版 + 有償 Pro 追加)で約 6k Star を持ちます[15]。Sushi SaaS も MIT で、Web サイトやデモを公開し積極的に情報発信しています[16]。一部テンプレは Pro で追加機能を提供しますが、Sushi は無料版で機能を出し惜しみしません。README やドキュメントの多言語化など、OSS コミュニティへの配慮も特徴です。

メンテナンスと最新技術

テンプレ選定では、更新の活発さと最新技術の採用が重要です。Sushi Templates は Next.js 15 を前提に、React Server Components と App Router を正面から活用します[10]。他の人気テンプレも概ね 2023–24 以降の新顔で、Drizzle ORM や App Router、Next.js 14/15 に対応済みです。SaasFly も Next.js 15 / React 19 を謳っています[17]。違いは統合範囲と作り込み。Sushi は Better Auth + Postgres + Drizzle による自己ホスト認証を採用し、外部依存を減らしつつ Google OAuth を含む一般的なログイン要件を満たします[18][19]。Auth.js や Clerk を使うテンプレもありますが、前者は設定がやや複雑、後者はホスト型サービスでロックインの懸念があります。Sushi は RBAC(管理画面の読み取り専用/読書き権限)も最初から整備され、サーバー側での保護パターンが示されています[33]。ixartz のテンプレは「依存を月次で更新」と明記しますが[20]、Sushi も頻繁にコミットされ、README/Docs の多言語更新など継続改善が見て取れます。

レスポンシブとユーザー体験

レスポンシブには体感性能(パフォーマンス)と画面可変(モバイル対応)の 2 面があります。Next.js の SSR/静的最適化、RSC、キャッシュ戦略を活かせるテンプレはいずれもキビキビ動きます[21]。Sushi も Next.js 15 の改善に乗り、GET /api/health のヘルスチェックなど運用配慮も加点要素です。UI 側は Tailwind のブレークポイントを活用し、LP/ダッシュボードともにスマホ/タブレット/デスクトップで自然にリフローします[22][23]。ナビゲーション/画像/テキストは適切にスケールし、Shadcn 経由の Radix コンポーネントはアクセシブルでタッチ操作にも強い作りです。

ドキュメントと DX(Developer Experience)

強いドキュメントは採用を左右します。多くのスターターは README とサンプルで案内しますが、Sushi はレポジトリ README の多言語化に加え、アプリ内に MDX ベースのドキュメントシステム(Fumadocs)を内蔵します[13]。DB やメール、ストレージなどの手順を /en/blogs/... で読め、製品ドキュメント/ブログの土台にもなります。フロントマターから SEO/JSON‑LD を自動生成する点も実用的。DX 面では ESLint/Prettier、pnpm、Turbopack(Webpack 併用可)、型安全な env、各種型定義など「電池込み」で、ixartz テンプレのような充実した開発体験に匹敵します[27][28]

Sushi Templates が勝っている点

比較を通じて、Sushi の際立つ強みは以下の通りです。

  • 機能の「収益化」まで同梱 — Stripe Checkout(サブスク/単発)とクレジット台帳による従量課金が最初から実装済み。使用量課金やクレジット制をすぐ導入できます[29]。さらに、招待/アフィリエイトも内蔵し、紹介リンク/登録/報酬を一気通貫でトラッキングできます[30]。OSS テンプレでここまでの「成長ループ」を持つ例は稀です。
  • グローバル対応(i18n)— next‑intl v4 による国際化ルーティングで、/en のようなロケール接頭辞と翻訳ファイル/ヘルパーが整っています[31]。ixartz も多言語を支援しますが[32]、Sushi は初期からスムーズに多言語を運用できます。
  • 認証とセキュリティ — Better Auth による自己ホスト認証で、長生きする堅実なセッション運用が可能。Google OAuth も同梱。RBAC によるサーバー側の保護パターンが最初から揃っています[33]
  • 拡張性とモジュール構成 — 予約(Reservations)のような小規模機能モジュールを同梱し、外部サービス連携(Stripe/Resend 等)や機能トグルの設計例を示します。自作機能を増やす際の指針になります。
  • ドキュメントの内蔵 — アプリ内で MDX ドキュメントを運用でき、SEO/JSON‑LD も自動化。導入/運用の摩擦が低く、学習コストを抑えられます[13]

総じて、Sushi Templates は必須要素(フルスタック、デザイン、OSS、最新技術)を満たしつつ、収益化・成長・多言語・管理/認証・ドキュメントで一歩抜きん出ています。「ボイラープレート作業ではなく、差別化機能に時間を割く」という本来の目的に集中できる土台です。

まとめ

Next.js の SaaS テンプレは豊富で進化も速いです。どれも共通機能を揃え、数週間分の初期開発を短縮してくれます。最適解はプロジェクト次第ですが、学習目的なら公式 Next.js SaaS Starter は良い選択肢です[34]。マルチテナント等の高度機能や Clerk を前提にするなら、ixartz のテンプレが合うでしょう[3]

一方、最小構成を超えて「収益化/多言語/成長機能」まで Day1 で欲しいなら、Sushi Templates には明確な優位があります。認証から決済、紹介、ドキュメントまで「電池込み」で、Next.js 15 ベースの OSS として提供。Sushi を選べば堅牢な土台で素早くローンチでき、差別化機能の開発に集中できます[10]

出典

本文の比較は、各プロジェクトの公式ドキュメントやレポジトリ(Sushi Templates の README/サイト、他 OSS テンプレの紹介ページ/レビュー等)を参照しています。スタック/機能/思想の差異を把握する助けとして、以下にリンクをまとめます。